先生が不登校になった
僕に与えられた後悔の時間は数秒ほどだったけど、先生がドアを開けて顔を覗かせるまでに、たっぷりと数分は過ぎたような気がした。
「…………どうして」
目を瞠った先生の唇がぱくぱくと動く。
久しぶりに見た先生の顔は記憶の中のそれよりもほっそりとしていた。少し痩せたかもしれない。
「あの、僕、心配で……その、ええと」
長い時間をかけて考えてきた言い訳なんか、一瞬で吹っ飛んでいた。
玄関先で顔を突き合わせたまま馬鹿みたいに目をそらし合う。
先んじて冷静を取り戻したのは先生のほうだった。首を伸ばして廊下の左右を確認した後、ドアを押して大きく開く。
「とにかく上がって」
その言葉に、僕がどれほど安堵したことだろうか。