【俺ガイル】『(やはり)俺(に)は友達がい(ら)ない』【前編】
俺ガイルSS 『(やはり)俺(に)は友達がい(ら)ない』
ガガガ文庫 渡航 著 「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」SS
11巻の後のお話です。細かな齟齬も大まかな齟齬も広い心でスルーしてください。
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肩まで伸びたセミロングの黒髪、小さくまとまった可愛らしい顔立ちによく似合うピンクフレームのメガネ ――― 俺や由比ヶ浜と同じクラス2年F組に所属する海老名姫菜嬢が、振り向き様、いつになく真剣な面持ちで切り出した。
八幡「 ……… あん?」
昼休み、いつものように早めの昼飯を終えて机に突っ伏していたところへ“ちょっと話があるんだけど”と小さく声をかけられ、人目を避けるようにして案内された先は校舎最上階の踊り場である。
踊り場とは言っても別にひと昔前でいうところのディスコのことではない。ジャスコだって今はイオンだし、近所のサンクスだっていつの間にかみんなファミマだ。いや、それはこの際どうでもいい。
物置代わりに雑多な備品の無造作に積まれたこの校内の一角は普段から滅多に人が訪れるようなこともなく、昼間でも薄暗いこんな場所を好き好んで利用するのは、俺のように孤独をこよなく愛するぼっちか、そうでなければふたりだけになれる居場所を求めるリア充(笑)のカップルくらいのものだろう。
ぼっちとリア充(笑)では対照的どころか対極的とさえいえるのだが、殊、人目を避けるという一点においてのみ好む場所の傾向が変に似通ってたりするから、昼休みや放課後の行動範囲が丸かぶりだったりするんだよな。そのお陰で今まで何度気まずい思いをしたことか。
ちなみに言っておくと、俺の名前はヒキタニではなくヒキガヤである。漢字で書くと比企谷。
もしかしたらこのまま卒業するまでずっと名前を間違えて覚えられたままではないかと不安になることもままあるのだが、クラスメートでさえ名前を知らない人間の方が圧倒的に多いこの俺にっとは実はさしたる問題でもないのかもしれない。
俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 1~106
俺ガイルSS 『そして彼と彼女は別々に歩み始める』 119~244
俺ガイルSS 『かくして文化祭に房総の赤き狂犬は暴走す』 253~742