和「汚物をぶちまけろ」
幼馴染がいつも通り、へらっと笑ってそう言うから、私は大層驚いた。
彼女の瞳は相変わらず澄んでいたけれど、それでもって彼女のことを分かっているだなんて、
そんなおこがましい事はもう言えなくなっていた。
「あ……ええ、わかったわ、行きましょうか」
搾り出すような声で返事をする私に、幼馴染は微笑みかけた。
ピンで止められた柔らかそうな髪が揺れる。
「やった。ねえ、手、繋いでいいかな?」
どうして、この娘はこんなことを言うのか、言えるのか。
クリスマスは近い。
どこかで、二千年前の聖者様が、私を見張っているんじゃないか、そんな気がする。
そんな気持ちが、ぎちぎちと、私の腕を締め付ける、手を縛る。
「なんてね。補習、遅れちゃうから急ごうか」
冬休みにも補習があるなんて、ブラックジョークにもならないよ。
そんなことを言っていたとは思えない、真面目な発言。
私の手は握られたまま、縛られたまま。
「そう、ね。急がないと、ね」
急がないと。